2009年5月28日木曜日

中学校における適応障害

臨床心理学大系10 適応障害の心理臨床 金子書房 1992 より抜粋

第2-2章 中学校における適応障害
序 中学校における適応障害の現況
 適応障害の心理学的な定義から考えて、
1.適応障害を起こしている特定個人の疾病や欠陥による適応異常
2.人格的に正常範囲内であるが、環境因子による
 上記を考慮するが、教師他より従来から環境因子の重要性が指摘されて
いた。
1節 中学校における適応障害
2.いじめ
 昭和61年度版の青少年白書によれば、昭和60年の4-10月までに、いじ
めの発生した公立中学校は、全国の68.8%にのぼる。その内容は、暴力
等物理的力によらないものが圧倒的である。それゆえ、いじめられた本人
の精神的苦痛は堪えがたいものがあるが、周囲に訴えづらく、保護者もど
うすることもできず、半数は警察に、3割は教師に連絡する。連絡されても、
直接の暴力以外には対応のしようもなく、事態が好転しない場合も数多く
あると考えられる。誰にも話さず、じっと我慢した子どもが35.9%をしめてい
る。
 いじめの原因や動機は、「力が弱い・無抵抗」「いい子ぶる・なまいき」が
多い。いじめられる側からすると、もともと力が弱く自分をアピールできない
状況につけこまれたり自分のどの態度が相手を刺激しているか見当もつ
かない。びくびくし、強い子のご機嫌を
うかがい、それが相手を刺激しさらにいじめられる悪循環になる。また、標
的も次々に変わりいじめに参加しないと次には自分がいじめれるというよう
な状況も出てくる。理由もなく、ある日突然いじめの標的になったり、いじめ
る立場のものが突然いじめられる立場になることもある。
 こうした中で、子どもたちはひたすら身近な友達を刺激しないように気を
遣い、はっきりとした自己主張を避け、他人にあわせ、当たり障りのない人
間関係を維持しようと生活する。
 自分を意識し、ものを考え、決定し、自己主張し、違う価値観や感情を持
った他者と正面から向き合いながら自己のアイデンティティを形成していく
はずの青年期に、それを阻まれストレスフルな毎日をおくらざるえない中学
生の問題は大きい。

4.中学校の現状把握の必要性
 学校が大規模になり、また、担任教師が若くなるに正比例し、学校嫌いで
50日以上欠席している生徒の数が増加していくという事実が明らかにされ
た(山本 1980/1986)。
 校内暴力に関しては、三輪(1990)が文部省の実態調査(1989)をまとめ、
学校規模に比例すると明らかにしている。よって、学校規模が大きくなるの
に比例して、適応障害が増加すると言えよう。
 中学の学級規模に関し、日本では36.3人(1989年)、OECD加盟国及び
東欧諸国では、20-30人の学級編成となっている(文部省、1990b/日本教
育行政学会 1987)。少人数クラスでなければ、教育は効果的に行えない
という事実は現今では常識にもなっている。

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